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月が綺麗ですね

声優沼に突き落とされた舞台系ジャニオタの末路。

受け止めきれなかった話~『Defiled』感想

 

 2017年4月6日、青山DDDクロスシアターで『Defiled』を観てきました。ほんとうはもっと早くに感想をまとめたかったのですが、今回ばかりは難しすぎたというか、いつにもまして考えがまとまらず、こんなに日が空いてしまいました。感想にもならない感想文を残しておきます。ガッツリネタバレですのでお気をつけください。

 

 

 

 舞台は1960年代のアメリカ。コンピューターが図書目録に取って代わり、目録カードが廃棄されることに反対する元図書館員が、爆弾を持って図書館に立てこもる。その元図書館員・ハリーを演じるのが戸塚祥太さん。ハリーを説得するため派遣された刑事・ディッキーを演じるのは勝村政信さん。緊迫した雰囲気の二人芝居です。

 

 正直に言うと、ハリーの内面がまったく理解できませんでした。というか、ハリーの台詞が入ってこなくて。

 ハリーが捲し立てる台詞は、たとえ刑事さんとの会話の中での言葉であっても、途中まではほとんど独り言のように感じました。客席を回りながら本と図書館の歴史を語る長台詞、とっても好きだけれど、あれは誰かに届けたい言葉じゃなくて、なんというか、やっぱり独り言なんですよね。だから観客に響かない。

 

 一方で、刑事さんの台詞が尽く 客席に届いていた のは、ハリーの心にどうにか届けようとしていたからだと感じました。刑事さん、ふわふわしているように見えるのに全然そんなことはなく、しっかりした戦略を持ってハリーに接していて、でもそこに嘘はないんですよ。凄いなあと思いました。

 どんな小さな呟きも届く勝村さんのお芝居、すごく素敵でした…笑わせるシーンも真剣なシーンも全部、ほんとは刑事さんから目を離したくないほど(笑)

 「大切なのはそういう日常なんだよ!」という台詞は鬼気迫るものがありました。

 

 それにしても、生声って素晴らしいですよね(唐突)一列目や通路側の人、あの距離で戸塚さんのマイクを通さない演技の声を聴いてメンタルもつのかな、、、わたしだったらしんでる、、、とぼんやり考えるなどしました。

 

 終盤に近づくにつれ、刑事さんの焦燥感も感じられるんですが、それ以上にハリーが心を開き始めている感じがして。だからこそラストが切なかったです。

 ハリーが1人で館内に戻ったあと刑事さんからの電話を取るのは何故なのだろう、やっぱりハリーは寂しがり屋で話したがりのワガママ人間だったのかもしれない、刑事さんとまだ話していたかったのかも、ってずっと考えていますが、答えは出ません。

 目録カードを見た時点で新着図書のことを思いついたのなら、その場で言及すればいいはずです。それまでのハリーは思ったことを(瞬時に脳内で組み立て直しているのだろうけど)脳直で口に出しているタイプだったのに、急に戦略をとった意味が分かりませんでした。

 「ハリー馬鹿な真似はやめろ!!!ハリー!おい電話だ!」って刑事さんの声だけが響く空間が切なかった。

 

 ハッピーエンドじゃない予感はそこはかとなくしていたけれど、やっぱりか…という感じでした。後ろから撃たれてしまい、それでも息も絶え絶えに爆弾のスイッチを押すのだけれど、思ったように作用しなくて、「何がデジタルだよ」って皮肉めいた笑いを浮かべて、リモコンを投げたところで、爆発してしまう。誰も救われない何も報われない、だけどそれがハリーには相応しい、そんなラストでした。

 それにしても戸塚祥太さんは本当に「殺したくなる役者」なんだなって……何度目だよ…もっと言うとDTのまま死ぬの何度目だよ…死に役似合いすぎだよ…

 

 図書目録が無くなること、それ自体が問題なのではなくて、コンピューターの導入がどんどん進むことで身体性が失われることをハリーは嫌っていたのかな、と思いました。ハリーにとって図書目録を守ることは「聖戦」なわけだけれど、それは、そこに紐付く図書館の「命」を守りたかったのだろう、と。「図書館はもう死んでる」って台詞好きでした。

 冒頭の爆弾を設置するシーンで、怯えたような緊張しているような不安げな表情を見せながら、わざわざ靴を脱いで慎重に図書目録カードが入っている台に登っていたのに、途中でヒートアップしたときは何も気にせず飛び乗っていたのが印象的でした。

 

 一番好きなシーンは、刑事さんが奥さんのレシピファイルの話をしたときに、ハリーが突然優しい表情になったところです。ふわぁ~って表情が変わって。そこに居た人の息吹が感じられるもの、そこから得られる感覚の話、だったからでしょうか。

 目録カードをもとに刑事さんの思い出の本を探してきて、「図書目録と図書カードは違うものなんだよ」って微笑みながら差し出すシーンも好きです。ハリーは純粋に本が好きなんだって伝わってきました。かわいい。

 キャスター付きの椅子に座ったまま落ち着き無く動き回るあの感じ、分かりやすく籠城犯って感じで、サイコパス感がにじみ出てました。好きです。

 

 

 正直なところ、ここまで書いた今でも、舞台背景や登場人物の感情変化を含め、全体的に『Defiled』はわたしには受け止めきれない舞台だったな、と思っています。観ている人の能力が問われることが舞台の醍醐味のひとつだと考えているので、精進します…!

 今はただ、なんのアクシデントも無く千秋楽を迎えられるよう祈っております。